桐島で始まり桐島で終わった2012

 もう2012年も残り少ないのである。2012年は単行本を3冊刊行できたのは幸いであるが、あそこをもっとこうすれば良かったという悔いも残っている。ともあれ、2012年度を振り返るに最高の映画体験は「霧島部活やめるってよ」(吉田大八監督)であった。

 この映画は私に「まだ何者でもない頃の自分」を思い出させてくれた。そしてまだ何者でもないが故の焦燥と諦観を見事に描ききった傑作であったといえる。

 2012年の冬で私は30歳になった。なったというよりも「なってしまった」といったほうが近いが、兎も角「何者でもないまま30歳を迎えた場合は潔く死のう」という高校生時代の覚悟は成就しないで済みそうな塩梅となったのには些か安堵がある。

 しかし、私は2013年を迎えるに辺り桐島が描いた焦燥と諦観からまだ完全に脱し切れていない自分がいるのに気がついた。脱せないばかりか、心はあの何ものでもなかった中学生・高校生のメランコリアにまた戻っている。その理由はひとえに、一応何者かになってしまった自分が、何者かにしてはまだあまりにも小さい事を自覚してしまったからに他ならないのだが、この焦燥に苛まれるまま、私は2013年を生きるしか無いし、また何か有用な決断をする必要もあるのかもしれないと思っている。

 私は愛国者ではあるが「保守」になった覚えはないし、「保守」の「仲間」の一角を濁しているつもりも微塵もない。単に自分の欲望を肯定し、生きているだけである。2012年はいろいろなしがらみがあった。外には出せない、当分墓まで持っていくようなしがらみも感じた。私は何かに所属することは大嫌いである。何故なら所属は安楽で快楽をもたらしてくれるが、と同時に人間の何か重要な部分を腐らせるからだ。その重要な部分が何なのかは言語化できないが、所属は強くて甘い。人は所属という概念に弱い。そしてともすればその所属の欲求に引きこまれそうになる中、寸前の所で等距離をとれたのは2012年の天の采配と言おうか。まず自分はどことも本来等距離であるという、この点を忘れず、小さいながらも常に自存自衛の心を忘れず、自営業者の誇りを忘れずに来年も何かやれればいいと思っている。



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