都青少年条例可決…反対派はなぜ敗れ去ったのか?

 さる13日に都議会総務委員会で”東京都青少年健全育成条例改正案本日(以下都条例)”が可決された。それを受けて本日15日、東京都議会定例会本会議で正式可決、成立した。本条例は来年7月に施行されることが決まった。

 当ブログでも過去記事等でこの問題を取り上げた経緯から、そして一介のアニメオタクとしてこの条例の行方を”非実在青少年騒動”の時分よりウォッチし続けてきた。このたび、本条例が可決成立されたことを受け、この条例の賛否は取り敢えず置いておくとして、明治大学准教授の藤本由香里氏等を中心として行われた一連の反対運動が、なぜ本条例の可決を阻止できなかったのか、そして”非実在青少年騒動”の折に条例反対を表明した民主党が何故賛成に転向するのを阻止できなかったのか、考察してみたいと思う。

1.条例の”拡大解釈”を危惧…じつは賛成派の格好の口実に

 前述の藤本氏はこの条例反対の最大の理由として、この条例の拡大解釈が表現活動の萎縮を生じさせるから…と繰り返し説いた。この理屈は非常に良く分かる。しかしながら、この反対派の最大の論拠こそ、実は今回民主党が賛成に回ったことの格好の口実を与えてしまっている自己矛盾に氏は気づいているのであろうか。

 条例文の拡大解釈・拡大運用が問題と言うなら、逆説的に言えば拡大解釈さえされなければ条例の趣旨には賛成である、といっているに等しいのではないだろうか。今年6月の”非実在青少年騒動”の時に、民主党が反対したのもこの「条例の拡大解釈」を危惧したからに他ならない。即ち、拡大解釈の懸念さえ払拭されれば条例の基礎理念には賛成、といのが旧来より民主党都議団が主張してきたこの条例に対するスタンス(下記引用画像)である。今回可決された都条例は、この拡大解釈の懸念を条文上ほぼ払拭したものであり、”非実在青少年”等とどうとでも取れる文句を削除して対象をほぼ明確化した。よって都議会民主党が賛成するのも当然の成り行きである。

 つまり反対派は、”拡大解釈の危惧”を叫べば叫ぶほど、民主党都議団が都条例に賛成する事の理論的根拠を与え続けてきたのである。反対派がこの条例に対して最も言わなければならなかったことは、”例えそれがどんなに非倫理的な性表現でもあっても、如何なる表現も表現の自由の元に許容されねばならぬ”という姿勢である。その為にこそ、以下に記述する”非倫理的な漫画表現そのもの”を公衆に見せなければ説得力は無かった。つまり、例えそれがどんなに非倫理的なエロ漫画でも、それを守らなければひいては漫画文化の衰微に繋がるという理屈の、根っこにある”非倫理的なもの”そのものを公衆に提示しなければならなかったのである。

2.何故ちばてつや秋本治の代わりに同人作家やエロ漫画家を出さなかったのか?「エロ漫画を守る」と言えなかった反対派


 ※あすから始まる都議会に再提出される見込みの青少年健全育成条例の改正案について、きょう都庁で、ちばてつやさんなどの漫画家が条例に反対する声明を発表しました。
 記者会見にはちばてつやさん、秋本治さんなど日本を代表する漫画家や出版社の幹部などが出席しました。(TOKYO MXテレビニュースより引用)

 本条例反対派が熱心に主張すべきだったことは、前述の通り「例えそれが如何に非倫理的な表現であっても守らなければ成らない」という主張であり、その為には当の「非倫理的な漫画」をまず公衆に提示しなければならなかった筈だ。そして全面に登場すべきは、そのような”非倫理的漫画”で生計を立てている18禁同人作家やエロ漫画家だった筈である。 

 ところがこの都条例反対派としてこの反対運動の全面に登場したのは、「あしたのジョー」でお馴染みの漫画家・ちばてつや氏と「こち亀」で国民的存在である秋本治氏である(上記ニュース動画参照)

 本条例でははっきりと、「刑罰法規に触れる性行為や近親相姦などを不当に賛美・誇張した表現」が対象と明記されており、法の素人が見ても「あしたのジョー」や「こち亀」が、例えば秋本治氏の言うように両さんの麻雀シーンが規制対象になる、という事など有り得ないことは明白だ。しかし、反対派がちばてつや氏や秋本治氏を全面に登場させた理由は、全面に登場させたのではなく「登場させる」しかなかったからではないか。

 なぜならこの条例をそのまま額面通り読んだとき、規制対象になる非倫理的漫画(所謂18禁同人誌やエロ漫画)を公衆の目に登場させると、これまで中立や反対派に意を同じくしていた彼ら反対派の同志や女性もが「その内容の酷さから賛成派に転向する者」が続出しかねず、これまで条例に関心を持たなかった中立的な世論までも条例賛成に強烈に傾くことを恐れたからに他ならないであろう。その「やましさ」を他ならぬ反対派の中核である藤本氏らが自覚していたからこそ、本来の立法趣旨である”非倫理的性描写漫画”とやらを書いている当事者でる同人作家やエロ漫画家を全面に出すこと(それが無理なら、せめて下記のようなエロ漫画の内容や表紙の紹介)が出来ず、エロとは無関係な当たり障りの無い国民的な老大家を担ぎ出すしかなかったのであろう。

 ちばてつや氏や秋本治氏という、本来条文の対象とは関係ない老大家を権威的に登場させ、現場で18禁同人誌やエロ漫画を描いている作家を全くといって良いほど登場させなかったという運動手法の稚拙さが、今回の敗因の一つであるといってよいであろう。何故、彼らを全面に出さなかったのだろうか。堂々と公にエロ漫画の内容を公開し、「私はこういうものを書いておりますが、私は性犯罪を犯したことも法を犯したことも無い。私には生活があり家族が有りファンがある。あなた達からは単なる害悪のエロ漫画に見えるだろうが、エロ漫画愛好者は羊のように大人しい人間ばかりであり、性犯罪を犯す奴らは常にスーパーフリーのような連中だ。表現者や表現物に罪は無い。私達が守りたいのはエロ漫画だ」と堂々と言えば、その意気やよしとして賛成派から反対派に転向した議員も居たかもしれないし、民主党都議団の中でも踏みとどまった議員も居るであろう。それが無理だというなら前述の通りせめて規制対象に成りうるエロ漫画の本編や表紙を藤本氏などが代理で紹介するべき(モザイクをふっても良い)であった。しかし、その”非倫理的表現”を直接公衆に触れさせることなく、条例の拡大解釈の危険性だけをひたすらに説く反対派の姿勢は、それを言えば言うほど「では拡大解釈さえされなければ本条例の趣旨には賛成である」(上述)というシグナルを送り続ける事(民主党都議団の主張と同じ)と成り結果的に逆効果となった。

 条例の本文とは直接関係のない老大家ばかりがしゃしゃり出てきて、現場で活躍する作家やその作品が、例え”非倫理的”であってもその内容の酷さから賛成やむなしに世論が硬化することを恐れ、悪戯にしずかちゃんの入浴シーンやベルセルクばかりを持ち出し、はっきりと「エロ漫画を守りたい」「エロ本の何が悪いのか」と言わなかった(言わせなかった)のは、運動手法として敗北であり、やはりエロ漫画・アニメをも愛するアニメ・漫画オタクの一人として慙愧に耐えないのである。

3.”石原憎し”でサヨクが反対派に大集結…漫画の話がいつの間にか石原憎し・保守憎しのサヨク活動に変貌!

 反対派の活動の中で、特に改正後に顕著だった事象ある。それはこの条例が石原都知事肝いり・都議会自民党という保守派主導で推進されたという事実に基づき、本来漫画と関係のない、単に「石原憎し」だけを主目的とする反石原のサヨク団体やサヨクネットワークが、漫画問題を隠れ蓑に反対派に次々と集結していったことが挙げられよう。

 特に石原都知事の「同性愛者はどこか足りないな」発言以降急激に増えたのは、同性愛者団体・ジェンダー団体などの中でも護憲・9条ネットワーク等と連帯する、前回都知事選で浅野元宮城県知事の背後に居たような、社民党共産党周辺にある魑魅魍魎のようなサヨク団体の参加であった。

 彼らは「表現の自由」と言うサヨクの常套句に惹かれたのか、漫画問題と全く関係の無い連中が、ネット上で「漫画オタクの麻生太郎は実は規制賛成派だからクズ、おなじく安倍晋三も規制賛成派だからクズ。次期都知事選挙では非自民候補を応援しよう!統一地方選挙でも規制反対の非自民候補(社民党共産党)に投票しよう!」と盛んに喧伝して回っているのは非常に不愉快である。

 このような「石原憎し」「保守憎し」だけで都条例反対派に如何にも表現規制反対派」を偽装して金魚のフンのように付きまとうサヨク団体・活動家は、漫画を政治利用しているに過ぎず、政治的野心の為に漫画・漫画文化を利用する彼らこそが文化破壊者であると断定できよう。この問題に真面目に反対している有識者・反対派にとっても、漫画を政治利用しているに過ぎないサヨクがここぞとばかり運動に参加して狂ったように「石原憎し」を口にしている事実は、彼ら反対派にとって最大の害悪であり、真面目な反対運動の冒涜でしかないことは明白である。

4.サヨクの工作に弄されること無く条例の適正運用を監視しよう!

 我々はこのような反対派敗北の理由を噛み締め、漫画を愛好する良心ある日本国民として、この条例の拡大解釈により全ての漫画やコミケが即座に消えるなどと言う空疎空論の揚げ足取りに終始することなく、条例の立法趣旨を尊重して、この条例の適正運用を監視しようではないか。

 さらに前述の通り、普段漫画問題とは全く関係の無い連中による、反自民・反保守・反石原の策動に踊らされてはならない。都条例反対でありさえすれば、憲法9条死守・天皇制解体・日教組教育推進・村山談話踏襲・従軍慰安婦に謝罪基金を創設・靖国神社参拝絶対阻止などを標榜する社民党共産党がこの国の政権与党になってもよいという諸君は、君達こそ売国奴でありこの国の文化破壊者であることを知るべきだ。

 都条例に関する賛成だけで、営々と努力してきた麻生太郎安倍晋三ら良心の政治家を一斉に罵倒し、あまつさえ次期都知事選挙衆院・地方選挙で非自民系候補を当選させようと言う運動は、漫画の政治利用でありサヨクの政治謀略の一貫であることを心得るべきである。
 我々はこの条例に賛成・反対の立場の別なく、国家観・外交安保政策という国家の根幹部分で全く国民世論と遊離した社民・共産党をこの都条例の反対と言うだけで賢明な勢力と判断してはならない。漫画規制よりも、国家・安保観の方が政治的イシューで常に上位であるのが正常な市民感覚であることを自覚すべきではないだろうか。

5.賛成派にも一言!”エロ漫画・エロアニメ”よりも害悪なものとは…?

 自民党公明党などは、都条例はもとより児童ポルノ法推進などに長年に渡り尽力されて来たのは理解するが、彼ら賛成派に最後に一言だけ言いたい事があるので書き記しておく。彼ら賛成派は、”非倫理的な漫画・アニメ”が青少年の人格形成に悪影響を与えていると力説するが、確かにその側面もあろうが、最も彼ら青少年の人格形成に悪影響を与えているのは過激な実写ポルノ(AV)であるのは論を待たないのではないだろうか。

 今回の都条例では、何故その規制の対象が漫画・アニメだけであり、実写AVが対象外となったのは甚だ疑問である。この条例の中に、実写AVも対象とすればさしもの反対運動も幾分かは和らぎ、反対派も少なくない人々が納得した事は容易に想像できるのである。

 何故、実写は対象外か。それは巷間言われているように、この条例を推進した石原都知事や自民・公明の都議団の意識の根底に、隠し切れぬ漫画・アニメへの蔑視があるからではないのか。「漫画・アニメの実態は良く分からないが、なにやら不穏で危険な存在であるのは確かだ」という蔑視・差別心は、その昔中国人・日本人に対して欧米人が抱いた「黄禍論」の構図と非常に良く似ていると感じるのは私だけではあるまい。

 「良く分からないが、取り敢えず危険な集団であろう」という断定的な見なし行為は、その根底に相手への無理解と無知から来る偏見と差別心から醸成されている。今回、わざわざ最大の害悪であるはずの実写AVを除外したのは、「何か良く分からない異質なものへの恐怖」というかつての「黄禍論」に余りにも似すぎている。当然ここには、都議会自民党公明党の中に熱心な漫画やアニメの愛好家が、彼らの年齢層(高齢)を考慮すればほぼ存在しないであろうという私の推測が当たっていればの話であるが、少なくとも当たらずとも遠からじであることは調査をしなくとも明白ではないか。

 更に言わねばならぬのは、青少年の人格形成に実のところ最も害悪を与えているのはテレビそのものである。「イケメンだから」と言う理由で、不良少年らの破壊活動や暴行・恐喝が美化され、あまつさえ彼ら声の大きいものが学校教師らの教導者によって救われる、というこの国特有の悪人正機の思想は、真面目に学業を行い学生生活を送っている勤勉な青少年の精神構造にこの上ない害悪を与えることは自明である。何故かこの国では、真面目に努力するものが日陰者=ダサい、として描かれ、声の大きい容姿の良い美少年・美青年は何をやっても許されるという歪んだ社会的風土が、主にテレビドラマによって醸成されている。その筆頭が、「ルーキーズ」であり「ごくせん」だ。

 公共電波であるテレビがこのような社会風土を醸成し、映画にまでして拡大再生産している現状下で、目立たぬ真面目な青少年が、”非倫理的漫画”とやらを家で隠れてこっそり読むことの自由まで奪われるのは、確かに彼ら反対派に同情するも止む無しの現実である。だからこそ私は、ちばてつや秋本治等と言った立法趣旨と無関係な権威的老大家ではなく、実際に18禁同人誌やエロ漫画を描いている作家やその愛好家が、自分達は法を犯したことも一度も無く、性犯罪を犯すのは常にスーパーフリー的連中(ルーキーズやごくせん等で描かれる連中)なのであると主張して欲しかったのである。

 しかし法案が成立した今、我々はその立法趣旨を厳然と受け止め、まずは不要不急の拡大解釈論を封じ、不断の努力で以ってその運用を監視し、青少年の健全な育成環境の醸成に尽力すべきであろう。






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