ニコニコアニメ夜話第１７回放送『マイマイ新子と千年の魔法』〜戦後日本の総決算的アニメ。すぐそこにある希望〜

　さて、当ブログでも2009年12月25日記事『マイマイ新子と千年の魔法』〜しかし、すぐそこにある希望〜【局地的大ヒットにつき続映を望む】でもご紹介した通り、公開4ヶ月経過した今も全国でロングランがつづいている脅威の傑作アニメ『マイマイ新子と千年の魔法』であるが、このたび不肖アニオタ保守本流のネットラジオ・ニコニコアニメ夜話に於いて取り上げさせていただきたく思い、さる2月20日横浜はニューテアトルにて再度鑑賞した。

　2回目の視聴によって私は更にこの作品の強いテーマ性を確信するに至った。ラジオ本編でも触れているが、1000年前、そして1955年、更には観客が生きているこの現代日本と言う３つのタイムラインに共通して存在するのは、時空を超えた普遍的な価値観＝希望の存在であり、そしてその希望とは我々の直ぐ傍らに存在すると言う強いテーマ性である。

　いま、日本は激変の時代を迎えている。年功序列・終身雇用に代表される日本的な価値観が90年代以降解体され、或いは破壊され、今ほど我が国が変動・変革の激変を迎えている時はないであろう。であるからこそ、本作『マイマイ新子と千年の魔法』が繰り返し述べているように、街並みは変わり、社会は変わり、そして肉体すらも必ず滅びるように、何もかもがうつろいゆくこの世界の中にあって、なにか一つ変わらない普遍的な価値観、この変動の時代だからこそ時代を超えた普遍的な価値観＝希望が求められている時はないのではないだろうか。

　物質（カネ）に価値観を委ねる時代は終わった。日本はまさに本作『マイマイ新子と千年の魔法』の舞台「1955年」が「55年体制」という戦後日本のある種構造的出発点の年であったように、物質至上の唯物的価値観でここまで登りつめてきた。しかし、バブルが崩壊し唯物論は終わった。なのにそれ以後の日本は、相も変わらずダムを作り橋を作り高速道路を作り空港を作ることをやめなかった。ここにこそ、バブル崩壊後「希望」を見出せないこの国の根本的病理があるように思う。

　もういい加減、目に見えるモノ、目に映るもの、目に触れるものだけを信じてきた、戦後の唯物論とはお別れをしよう。我々はこの作品をして、どんなに社会が変わろうとも、そしてどんなに肉体が、物質が滅ぼうとも、繰り返し繰り返し示される、過去から未来に通底する価値観＝希望を見つけることが出来るではないか。

　この映画はノスタルジィ映画ではない。この映画が郷愁を求める映画だったら、田圃の畦道も蛍の光もダム遊びという原体験も無い、コンクリートの中で育ち、子供時代の遊びの記憶がマリオとドラクエだった私が、こんなに涙を流すことはない筈である。

　それは、繰り返すがこの作品には時代を超えた普遍的な価値観＝希望が通底しているからに外ならないからだ。それこそが、観るものの心を捉えて離さないからである。

　本作『マイマイ新子と千年の魔法』からは、この国の戦後の終わりを、そして何か新しい時代の幕開けと、それに相応しい価値観を感じることが出来る。そしてその価値観は、いつまでもいつまでも、手を伸ばせば届く、あなたのすぐ傍らに確かに存在し続けるのである。1000年前も、1955年も、そして現在にも。

＊2月20日、横浜市ニューテアトルの上映後、パンフ購入者に監督のサイン特典が！家宝に致します。

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ＭＰ３で視聴する↓（５０分）＊右のボタンからダウンロードできます。

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＊ニコニコ動画版

⇒ニコニコ動画版アドレスhttp://www.nicovideo.jp/watch/sm9800835

＊youtube版
Part1 Part2 Part3 Part4 Part5

◎第１７回放送概要

巷のアニメオタクが、古今東西の名作アニメを熱く語るネットラジオ「ニコニコアニメ夜話」。

今回のお題作品は『マイマイ新子と千年の魔法』。

主なトーク内容（トークテーマ＊戦後日本の総決算的アニメ〜すぐそこにある希望〜）
＠緻密で丁寧な描写
＠ノスタルジーではない、描かれる社会的な闇
＠千年前から変わらない普遍的な価値観とは？
＠すぐそこにある希望
＠１９５５年の意味
＠戦後日本の総決算的アニメ
＠唯物論との決別
＠マイマイ新子を応援してください！