映画『宇宙人ポール』評、そして『未知との遭遇』

 宇多丸師匠がシネマハスラーでやたらと高評価していたので、早速『宇宙人ポール』を見に行ってきた。エイリアン=グレイ型の宇宙人ポールとオタク男二人の珍道中を描く、SFコメディロードムービーである。その内容は完成度は高く、SF映画が好きな人にはクスリと笑えるパロディが満載だ。特に『未知との遭遇』『E.T』『MIB』『スター・ウォーズ』など往年のSF超大作に慣れ親しんでいればなお良い。しかも最後に出てくる登場人物が、『エイリアン』で有名なXXXX(うわーネタバレ!?)なのだから爆笑である。

 宇多丸師匠は本作を『未知との遭遇』と対比させて描いた。言わずもがな、異性人とのコンタクトを描いた(そのまんま『コンタクト』という映画もあるが)『未知との遭遇』への、本作は明白なオマージュであるといえる。だて、本作の舞台がXXXX州のXXXXXなんだから明白!

 『未知との遭遇』は、S=スピルバーグが『ジョーズ』で一躍世界的に出世した次の作品として、1977年に公開されたSF超大作だ。余りにも古典なのでネタバレだけれども、『未知との遭遇』は5音階からなる音楽によって異性人(エイリアングレイ型)とのコミュニケーションを図り、それは成功した。

 言葉が通じない相手と、音楽を解して意思疎通を図るというのは当時画期的設定であるといえよう。『宇宙人ポール』では、それ以前にポールが流暢な英語を話すので、意思疎通の問題は難なくクリアーしている。宇多丸師匠が本作と『未知との遭遇』を比して、「宇宙人ですらコミュニケーションが取れるのだから、いわんや人間をや」という『未知との遭遇』の壮大なテーマ性を、いみじくも本作も踏襲する、心温まるエイリアンとの交流には涙を誘う部分がある。そしてだんだんとエイリアングレイ型のポールが小動物のように可愛らしく見えてくるから不思議である。

 本作に登場するのは、コミコン(日本で言うところのコミケ的イベント)の為に英国からはるばるやってきた独身の冴えない二人のオタクと、聖書原理主義を貫く敬虔な独身女性、という面々である。コミュニケーションという殻に閉じこもっていたこれらの人々が、本作の進劇と共に、やがてこの殻を打ち破り解放に向かっていくというラストは、本作が単なるSFパロディ映画ではなく、人間の可能性を示したヒューマン・ロードムービーであることの証左である。

 『未知との遭遇』は1977年に公開されたと書いた。この時代は、米ソ冷戦の真っ只中で、まかり間違えば核戦争・人類滅亡の可能性すらあった。米国では民間で地下シェルター建設が流行し、学校では核戦争非難訓練が行われていた時代である。そんな時に「我々は宇宙人とさえコミュニケーションが取れる、なのに何故人類は共に争うのか」と問うた『未知との遭遇』の功績は計り知れない。

 冷戦は終わったが、世界は9.11以後、新たなカオスから抜け出すことが出来ない。日本国内ですら、各階層の対立が先鋭化している。そんな21世紀にあって、『未知との遭遇』への尊敬に基づくオマージュである本作は、また格段の意味があろう。

 ちなみに『未知との遭遇』公開当時のキャッチコピーを知っているだろうか。「We are not alone.」(我々は孤独ではない)である。内ゲバなどやっている場合ではないぞ。



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