ルネ・ラルー『ファンタスティック・プラネット』と漫画『進撃の巨人』

 

 さぁ、ゴールデンウィークも只中にある昨今、読者諸兄は如何お過ごしであろうか。世の人民が海へ山へそして郷里へ或いは海外へとまるでゲルマン民族大移動のごとく付和雷同している中、一人自室で「いつか見る/見返すリスト」として温存しておいたアニメのDVDをここぞとばかりに見返していたとしたら、それはアニオタとして実に正しいゴールデンウィークの過ごし方であると断定せざるを得ない。

 さて、今回はまったりとアニオタ保守本流管理人ことワタクシが、まったりと独断と偏見で趣味の良質アニメ作品を紹介する記事にしたいと思ふ(何故か旧文)。今回ご紹介するのは、読者諸兄ならご存じの方も多かろうが、今まで当ブログでは取り上げてこなかったフランスアニメ界の巨匠、ルネ・ラルーの『ファンタスティック・プラネット』(1973年)をご紹介致したい。

 このルネ・ラルーという人物については、残念ながら管理人には豊富なフランスアニメの知識がないのでここでは詳述しないが、まぁその、アレですな。流石ヌーベルバーグのフランスらしい、極めてフランス的な前衛作家と言えよう(2004年、74歳で没)。そのルネ・ラルー監督の代表作として最も名高いのが本作『ファンタスティック・プラネット』であることは衆目の一致するところである。本作は広く一般にDVDが販売されており、日本でも極めて手に入れ易く、且つその内容の異様さと衝撃性で以て極めて秀逸なSF作品としても高い評価を獲得している海外アニメの傑作と言えよう。あえて本記事ではカルトアニメの分類項にも入れているが、その内容の凄まじさは何か人種や思想や国家などと言った、凡百の世俗的テーマを超越した宗教的な匂いすら感じる作品となっている。

 本作の作品概説を軽く記したい。舞台は地球に似ているようで似ていない奇妙な惑星である。そこには、地球人型の人類(オム族)と、デスラー総統ばりに顔の青い巨人族(ドラーグ族/ドラーグ人)の2種が存在している(下記)。

  
*巨人型のドラーグ人(左)は、既にロケット技術を持つ高度な文明を形成しているのに対し、人類型のオム族(右)は旧石器レベル相当の文明であり、ドラーグ族からは動物の一種としか認識されていない。


 残念ながら、人類型の(オム族)は旧石器レベルで、エイリアン風のドラーグ人は既に現代文明の域に達していることから、両者の力関係は絶対であり、圧倒的に人類はドラーグ人に支配(そも文明レベルが違いすぎて、ドラーグ人から人類は単なる奇異な動物の一種とみなされている)され、あるものは愛玩動物として飼われているという始末である。また、当然のごとく人類はドラーグ人以外の、この惑星に存在する単なる野生生物の驚異に対しても脆弱であり、簡単に奇っ怪な動植物の餌食になってしまうほどか弱い存在としてスタートする。本作が面白いのは、この旧石器レベルの文明しか持たない人類が、物語が進行するに連れて徐々に徐々にその文明レベルを向上(ドラーグ人から模倣、或いは吸収)させ、ドラーグ人に対し脅威を与えるまでの存在になっていくその過程である。

   
*(左)ペットとしてドラーグ人少女に可愛がられる?人類。(右)野生生物の捕食によって余りにも簡単に死ぬ人類。(左下)懸命に学習して文明レベルを上げて行く人類。(右下)文明レベルが古代ギリシャあたりの水準まで上がった人類(でも死ぬ)。

 そしてその過程で、力をつけ数を増やし始めた人類をゴキブリ並みの害虫の一種と判断したドラーグ人は、最新の科学技術を以て人類を駆除し始めるのであるが、ここが圧巻である。とにかくいとも簡単に人類が死ぬ。死ぬ。これでもかというくらい簡単に殺され死ぬ。かわぐちかいじの「ジパング」に於けるイージス艦とレシプロ機の戦い以上に、全く比較にならない文明レベルの差を嫌という程見せつけられるのである。

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*(左)野生生物に対し捕獲兵器を用いて組織的狩猟戦を展開し、勝利するまでに至った人類(でも死ぬ)。(右)電子制御(?)の誘導生物兵器によって寝込みを教われ全滅する人類。(左下)反重力?でホバリングしながら的確に人類の巣穴へ誘導弾を打ち込む無人攻撃機。漸く古代ギリシャレベルの人類が適う相手ではない。(右下)ゴキブリを殺すのに良心の呵責は存在しない。人類の屍を尻目に、悠々と殲滅作戦を展開する巨人(ドラーグ人)。

   
*(左)産業革命を経て近代工業文明を建設するまでに至った人類。(右)ところが報復に遭い、やはり虫けらのように殺される人類。(左下)無人吸着器?によってまるでダニのように殺される人類。(右下)最終的にはビーム兵器まで用いて人類を殲滅する作戦に出たドラーグ人。

 そしてこの人類VSドラーグ人の戦いはどうなるのかといえば、人類側がドラーグ人のある弱点をついた戦法をとりドラーグ人が大混乱に陥る。ここで興味深いのは、人類がドラーグ人を反対に殲滅したりするのではなく、最終的に両者は講和条約を結ぶという事で決着する点である。実に何と言うかフランス的結末である。

 
*ドラーグ人のとある急所を狙った作戦が奏功し、ドラーグ人と講和することに成功した人類!


 さて、以上が作品概要であるが実際に本作をDVD等でご覧になられるのが手っ取り早いと思う。異様な世界観、奇妙なタッチの作画が何とも言えないシュール性とカルト性を醸し出しており、一度観たものの心を捉えて離さない名作アニメである。既にご覧になって自宅にDVDを保管されている方も、GW中に見直して再びシュールな気分に浸ってみてはどうだろうか。

 本作のように、人間型の異人種が通常人類を圧倒的に殺し支配するという世界観で、昨今非常に良く似た漫画作品が刊行されている。諫山創氏の『進撃の巨人』(少年マガジン)という作品である。本作もまた、「巨人対人類」という類似した世界観が通底されており、また巨人側を必要以上に不気味に描き出し、また人類がいとも簡単に殺される描写を多用することにより、如何に人類が脆弱な存在であるかを際だたせるのに成功している。加えて本作、『進撃の巨人』はその作画のタッチが硬い為に、やはり『ファンタスティック・プラネット』と同様非常にシュールな雰囲気を醸し出していることも類似点に上げられるであろう。

 
*『進撃の巨人』では圧倒的な力を持つ巨人が人類を捕食する。ここでも簡単に死ぬ人類。

 両作に共通するのは、観終わった(読み終わった)後の何とも言えない後味の悪さとシュールさであり、こと『進撃の巨人』は漫画作品としての完成度はもとより、そのSF設定も非常に緻密かつ秀逸であり、是非とも『ファンタスティック・プラネット』と一緒に併読をおすすめしたい今注目の漫画作品である。まだ1巻のみ刊行であるが、続刊が待ち遠しい。

 ということで、今回の記事はルネラルー不朽の名作『ファンタスティック・プラネット』と、その和製漫画版とも言える『進撃の巨人を紹介した。

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